遺産を寄付したい!二つの方法と注意点

生前携わっていた慈善活動があったり、お世話になっていた団体があるような場合、自分が亡くなった後に遺産を寄付したいという意思がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

方法としては、遺言で行う方法と死後に相続人に寄付をしてもらう方法の2つの方法が考えられますので、その方法を知っておきましょう。

このページでは遺産を寄付する方法と注意点についてお伝えします。

 

1.遺産を寄付する2つの方法

遺産を寄付する方法には次の2つがあります。

 

1-1.遺贈で寄付をする方法

一つは遺言で慈善団体等に対して遺贈をする旨記載して、慈善団体がこれを受け取る方法でする寄付です。

このような寄付の方法のことを「遺産寄付」という言い方をすることがあります(例:国境なき医師団)。

「遺贈」とは、遺言で相続人以外の人に死後に遺産を譲る行為のことで、このような遺言があると相続の規定に優先して遺贈をすることができます。

遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言などの方法がありますが、どの方法でも遺贈で遺産を寄付することは可能です。

 

1-2.相続人が一旦相続をした後に寄付をする方法

次に相続人が一旦遺産を相続した後に、相続人に遺産を寄付してもらう方法です。

遺産といっても通常は不動産であったり自動車であったり、直接寄付するのが難しいものがあるような場合には、売却をした上で寄付しなければなりません。

となると生前には難しい場合がありますので、死後に相続人に寄付をしてもらう方法です。

 

2.遺産を遺贈して寄付する方法の注意点

では遺産を遺贈する方法で寄付をする場合の注意点を知っておきましょう。

 

2-1.遺留分に注意

「相続人といっても音信不通になってしまった子しかおらず、そんな子に使われるくらいだったら寄付してしまおう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、このような遺贈をすると、相続人の遺留分を侵害することになるため、受遺者は遺留分侵害額請求を受けることになってしまいます。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障されている遺産に対する権利をいい、遺贈によってこの権利分の遺産を受け取れない場合には遺留分の侵害があったとして、遺留分侵害額請求を受けることになります。

この請求を受けると、受遺者としては対応するための金銭の支払いをするか、遺贈を放棄するかの判断を迫られことになります。

例えば、遺産が5,000万円分の価値がある場合に、不動産の価格が大部分を占めて4,000万円で、預金が1,000万円が遺産である場合で、これを全部寄付したような場合に、子一人が相続人の場合には2,500万円の遺留分侵害額請求をされることになります。

こうなると、寄付を受けた側としては、

  • 寄付を受けた現金1,000万円に1,500万円を自腹で用意して支払う
  • 遺贈された不動産を売却して支払う
  • 遺贈を放棄する

ということが必要になり、寄付を受けた側にも負担がかかります。

遺留分に配慮した遺言をしておくか、遺留分侵害額請求を受けても良いような対策を講じておくことが望ましいといえます。

 

2-2.寄付を受ける立場にも配慮

寄付によって遺産をあげるのだから、なんでもいいだろう…というわけではありません。

自宅を寄付するといっても、そのまま自宅を使うようなことが想定できる場合はまだしも、自宅の利用について全く関係のない事業をしている慈善団体からしてみれば、自宅を整理して売却するような手間が発生したり、売れない場合には固定資産税の負担をする必要に迫られたり、これが面倒であれば遺贈の放棄をする必要があります。

そのため、慈善団体によっては寄付する遺産に現金や有価証券など、現金化しやすいものに限定していたり、遺言執行者による換金後に受け取るということにしているところもあります。

寄付を受ける側が利用に困る可能性のあるものについては、事前に問い合わせをしておくことが望ましいと言えるでしょう。

 

2-3.遺言は正しく作成する

遺贈により遺産を寄付する場合の最大の注意点は、遺言を正しく作成することです。

遺言は、民法に定められた方式に従って正しくする必要があり、方式に違反があった場合には無効となります。

無効となると、原則に戻って相続がされることになるので、寄付しようと思った相手に遺産が渡らない可能性が高いといえるでしょう。

遺言の中でも公正証書遺言を作成する場合には、公証人が作成するという形式である以上無効となることはあまりないのですが、自筆証書遺言・秘密証書遺言で作成するような場合には一人で作成をすることになるので、無効となってしまうリスクが非常に高いと言えます。

遺言作成時には専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。

 

2-4.遺言執行者を指定しておく

遺言で寄付をする際には、遺言執行者を指定しておくことが有効です。

もし遺言執行者がいない場合には、相続人と受遺者が遺言で寄付をするとした目的物についてのやりとりが発生します。

遺言での寄付に納得がいっていない相続人が居るような場合に、トラブルになる可能性があり、そうなると寄付が適切に行われない可能性もあるのです。

遺言執行者を指定しておけば、亡くなった後の手続きは遺言執行者に一任することができます。

手続きがスムーズに運びますし、トラブルも減るので、遺言執行者の指定をしておきましょう。

 

3.相続人が一旦相続をした後に寄付をする方法

正式な遺言をしていない場合には、相続人が一旦相続をした後に寄付をしてもらう方法が考えられます。

 

3-1.相続人には義務はない

相続人に生前に寄付をお願いしておいた場合でも、遺言のように正式な効力を持っているものではありません。

そのため、相続人にはこれに従う義務はなく、寄付をしてくれるという確実性はありません。

 

3-2.エンディングノートなどで相続人全員にわかるようにしっかり記載を

特定の相続人だけに寄付を口頭でお願いしたような場合、一人だけ寄付をしなければならないのか?と考えてしまい、寄付が行われない原因となります。

遺産分割協議に先立って、形見分けを行う際に、エンディングノートがあれば当然それは相続人で見ることになります。

相続人全員が寄付を希望している旨を認識できるようにしておくことで、話し合いの中で寄付についても協議の対象となる可能性もあると言えます。

エンディングノートなどに、寄付を希望する旨や、希望するに至った経緯などについて詳細に記載して、希望を汲んでもらえるようにしておくのが良いでしょう。

 

3-3.相続税の寄付金控除などメリットがあるものであることを説明しておく

寄付というと、遺産を一方的に寄付する必要があるため、どうしてこのようなことをしなければならないのか?という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、遺産が相続税の基礎控除を超えるような場合には、相続税の申告・納税の義務があるのですが、寄付金については一定の要件をみたすものについては、相続税や所得税・市県民税(住民税)などの控除の対象になります。

寄付は場合によっては相続人にとっても利益になるので、相続対策をするために家族で話し合いをする際に寄付を希望している旨と併せて、どのような利益があるかも話し合いの議題として説明しておくことが有効です。

 

4.まとめ

このページでは遺産を寄付する方法についてお伝えしてきました。

遺産の寄付については遺贈として行う方法と、相続人に寄付をしてもらう方法があります。

寄付にあたって不明な点がある場合には専門家に相談をすることにしましょう。

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