相続における後見人制度利用者数、また今後の展望

  • 2020年11月27日
  • 2020年11月28日
  • 後見人
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相続手続を行う際に、相続人の中に判断能力に乏しい方がいた場合には、後見人を選定しなければならないケースがあります。
高齢化の進展に伴い、後見人制度を利用する方は年々増えており、後見人設置は多くの方にとって身近な問題になりつつあります。

また、相続手続における後見人の必要性は今後もさらに高まっていくでしょう。
後見人制度の現状と、今後の展望、さらに相続において後見人制度を利用しなければならないケース、利用しなくてもよいケースはどんなケースなのか、詳しく解説していきます。

成年後見制度の現状

まずは成年後見制度の現状について厚生労働省の「成年後見制度の現状」という資料から詳しく解説していきます。
利用者数の推移や、相続手続のために利用する人はどの程度か、誰が後見人として設置されることが多いのかということについて詳しく見ていきましょう。

成年後見制度利用者の推移

厚生労働省は「成年後見制度の現状」」という資料において、成年後見制度の利用者数の推移を公表しています。
この資料によると、成年後見制度の利用者は年々以下のように増加していることが分かります。

・平成24年:166,289人
・平成25年:176,564人
・平成26年:184,670人
・平成27年:191,335人
・平成28年:203,551人
・平成29年:210,290人
・平成30年:218,142 人
・令和元年:224,442人

平成24年から令和元年までの間に毎年6,000人〜10,000人のペースで増加していることが分かります。
確実に成年後見制度の利用者は増加しています。
しかし、日本国内には後見が必要な判断能力に問題があるとされる方が約1035万人程度存在すると見られており、利用者数はこのうちのわずか2%に過ぎず、割合として見れば「まだ成年後見制度は広がっていない」と言うこともできるでしょう。

相続手続のための申し立ては上から5番目

成年後見制度の申し立てを行う際には、多くの方が成年後見制度の利用が必要な状況になってから申請を行なっています。
このうち、「相続手続のために成年後見制度を申し立てた」という方は上から5番目に多くなっています。
成年後見制度、申立の動機の上位5つは以下のようになっています。

・預貯金等の管理・解約
・身上監護
・介護保険契約
・不動産の処分
・相続手続

親族の中に判断能力に問題がある場合には、相続の際にその親族に対して成年後見制度を利用する人は数多く存在します。
万が一、ご自身の親族の中に判断能力に問題がある相続人がいるのであれば、そのまま相続手続を進めるのではなく、成年後見人を設置してから相続手続を進めるようにしてください。

成年後見人になる人は専門家が最も多い

成年後見制度は申立時に後見人候補者を指定することができますが、最終的に後見人を誰にするかということを決めるのは家庭裁判所です。
そして、後見人になる人の中で最も多いのが弁護士や司法書士などの専門家で、主な順位は以下のようになっています。

・司法書士
・弁護士
・子
・社会福祉士
・その他親族

このように、司法書士が1位、2位が弁護士、4位に社会福祉士というように、子供や親族よりも専門家の方が多くなっています。
後見人を誰にするのかということを決めるのは家庭裁判所です。
被後見人の財産の管理などを行う時に被後見人の財産が多い場合や、相続手続の場合には、後見人を親族にしてしまうと中立性が損なわれるため、後見人が弁護士や司法書士などの職業後見人になるケースが多くなります。
相続手続の際には、弁護士や司法書士が後見人になることもあると頭に入れておきましょう。

相続において成年後見人が必要なケース

相続手続全てにおいて、成年後見人等の設置が必要になるわけではありません。
成年後見人制度とは、判断能力に不安がある人が不利益を被らないための制度ですので、具体的には以下の2つのケースの場合のみ、設置する必要があります。

・遺産分割協議によって法定相続分とは異なる割合で相続する場合
・預金口座の名義変更等の手続き

相続手続において、成年後見人が必要になる2つのケースについて詳しく見ていきましょう。

法定相続分とは異なる割合で相続する場合

遺産分割協議などによって、法定相続分とは異なる割合で相続する場合には後見人の設置が必要です。
後見人を設置しないと判断能力に問題がある相続人が、全く財産を相続することができないなどの著しく不平等な立場に置かれてしまう可能性があるためです。
相続人の中に判断能力の不足した方がいるにも関わらず、遺産分割協議を進め、法定相続分と異なる割合で相続手続をした場合には、その相続手続が無効になる可能性があります。
相続人の中に判断能力に問題がある方がいる場合には、必ず後見人設置の申し立てを行うようにしてください。

預金口座の名義変更等の手続き

また、相続手続の際には、預金口座の名義変更手続などを銀行で行わなければなりません。
例えば、親の預金を相続する場合には、当該口座のある銀行窓口で相続の手続が必要です。
この手続きは原則的に本人しかできません。
しかし、本人に判断能力がなければ、この手続きをすることができないため、後見人の設置が必要になります。

法定相続分通りに相続する場合は不要だが

法定相続分通りに相続手続を行う場合には、成年後見人は不要です。
法定相続分通りであれば、判断能力に問題があっても不利益を被ることはないためです。
しかし、法定相続分通りだと言っても、現実には後見人の設置は必要になると考えた方がよいでしょう。
ほとんどの相続手続には何らかの法律行為が必要になるためです。

不動産や預金の名義変更には後見人が必要

法定相続分通りの相続をする場合には、後見人の設置は不要です。
しかし、遺産分割協議自体に後見人が不要であったとしても、相続手続には必ず預金口座の名義変更や、不動産の相続登記などの法律行為が必要になってしまいます。
判断能力に問題がある相続人は単独で名義変更や相続登記の手続きをすることは不可能です。そのため、手続きの際には後見人の設置が必要になります。
相続人の中に判断能力に問題がある方がいる場合には、基本的には後見人の設置が必要になるものと理解しておきましょう。

相続における後見人は今後ますます増える見込み

相続手続において、今後後見人の設置はますます増えることになるでしょう。
今後は高齢化はさらに進みますし、独居の高齢者も増えていく可能性が非常に高いためです。
また、冒頭述べたように、日本国内には約1035万人も判断能力に問題がある方がいるにも関わらず、成年後見制度を利用している人はたったの22万人です。
この原因は成年後見制度の認知がまだまだ不足していることと、判断能力のある高齢者を子供などがサポートすることができているという理由が考えられます。
後見人になる人の多くが司法書士や弁護士や社会福祉士であることから分かるように、後見人が設置されている高齢者の多くが独居でサポートしてくれる家族がいないケースであることが分かります。
今後、さらに高齢化していけば老老介護が多くなり、子は親の法律行為までサポートすることができなくなるケースも増えていくでしょう。
すると、さらに後見人制度の利用者は増えていく可能性があります。
また、後見人制度を利用することは、判断能力の不足した親族をサポートしている方にとっても大幅な負担軽減になります。
親族の中で判断能力の不足している方がいるのであれば、成年後見制度の利用を検討するとよいでしょう。

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