法定相続人がいない場合、相続財産はどうなる?特定の方に財産をゆずる遺贈とは?

自分も高齢になってきたけど、相続人になる人がいない、このような場合は自分の財産はどのようになってしまうのでしょうか。
この場合、実は国庫に帰属する=国のものになってしまうということが定められており、自分の思うようにはならないことになります。
お世話になっていた人に遺産を遺したい、慈善団体や自治体に寄付をしたいなどの意思がある場合には遺贈によるのですが、それはどのようにすればいいのでしょうか。
このページでは法定相続人がいない場合の処理と、遺産の行先を指定する遺贈についてお伝えします。

1.法定相続人がいない場合に人が死亡した場合どうなるか

法定相続人がいない場合にその人が亡くなるとどうなるのでしょうか。

1.法定相続人がいない場合とはどのような状態か

まず、法定相続人がいないとはどのような状態を指すのか確認しましょう。
人が亡くなったときには、民法の相続の規定に従って遺産の分配が行われるのですが、相続人は民法に規定されています。
誰が相続人になるかについては次のように定められています。

● 配偶者は常に相続人になる
● 子がいる場合は子(第一順位)
● 子がいない場合には親など直系尊属(第二順位)
● 子も直系尊属もいない場合には兄弟姉妹(第三順位)

ここで注意が必要なのは、例えば親が死亡したときにすでに子が死亡しているような場合でも、その子である孫が生存しているような場合には代襲相続が発生していることになります。
また、子は離婚をして別居をして連絡をとっていないような場合でも、法律上の子である以上は相続権を有します。
もし相続人が居る場合でも、相続欠格に該当する行為を行ったり、相続人の廃除を申し立てられて家庭裁判所の審判によってこれが認められたような場合には相続人ではなくなります。
相続をしたときに相続人であった場合でも、相続放棄をすることによって相続人ではなくなった場合にも相続人がいないという状態は生じます。
相続人がいないというのは、人が相続させたい人がいない、という主観ではなく、法律上相続することができる根拠を持っている人が居ない状態のことをいいます。

2.相続人がいない場合には様々な手続きを経て相続財産は国におさめられる

相続人がいない場合には次のような手続きを経て結果としては国におさめられることになっています。

2-1.相続財産は法人となって相続財産管理人が選任される

相続人なくして亡くなった人が居る場合には、その財産を管理するために、相続財産を法人とすることになっており(相続財産法人)、その法人の管理のために相続財産管理人が選任されます。
法人というと株主のいる株式会社をイメージする方も多いと思うのですが、財団法人のように、一定の資産の集まりを法人とすることもあり、相続財産法人は相続人がいない場合の法律上の処理を行うために組織されます。
この際に不動産については相続財産法人所有になったことの登記名義の変更が行われます。

2-2.公告が行われても相続人が居ない場合には国庫へ

相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所がこれを公告することになっています。
公告とは官報に掲載するもので、相続財産について名乗り出てもらうために行われます。
この公告では、相続人が居る場合には名乗り出るように記載されており、この期間に相続人が現れなかったときには次の公告が行われます。
次に相続財産にたいする債権者および受遺者がいたら名乗り出るように公告が行われます。
最後に相続人がいないかを公告で探すことになり、この公告に応じて相続人が名乗り出なければ、相続人がいないということが確定して、相続財産を売却して国庫におさめる手続きをとります。

2-3.特別縁故者がいる場合

例えば、亡くなった人と内縁関係にあった(内縁の妻は配偶者ではないので相続人ではない)ような場合など、特別な関係にあったような場合には、それらの人を特別縁故者として相続財産の一部又は全部を与えることができることになっています。
最後の相続人の捜索の公告が終了した後に特別縁故者が家庭裁判所に申請をして行います。
相続財産のうちどの程度が特別縁故者に分配されるかは、亡くなった人と特別縁故者の関係次第で家庭裁判所の判断になりますし、そもそもここまでに公告などの期間も考慮すると1年半以上かかるものになりますので、遺産を遺したい人がいる場合には特別な対策を練っておくべきです。

3.相続人がいない人が遺産を渡す場合の遺贈を中心とした方法を確認

相続人がいない人が遺産を誰かに遺す場合には遺贈を中心とした次のような方法があります。

3-1.遺贈

遺贈とは、遺言をつかって遺産を譲り渡す方法をいいます。
民法上の遺言の方式によって自分の財産の分配先を決めておくと、死後にその人が遺産を受け取ることができます。
これは相続人だけに限らず、第三者も遺産を受け取ることができるので、相続対策・相続税対策として利用されます。
相続人が居ないような場合には遺産が国におさめられてしまう事態を避ける上でも、遺贈は有効に働きます。

3-2.遺贈以外の資産の譲渡の方法

遺贈以外にも資産を自分の思う通りに譲渡する方法があります。

3-2-1.生前贈与

相続・遺贈は自分が亡くなった後に効力を発揮するものですが、生前から贈与を行っておけば同じく自分の財産は思った通りに移転をすることができます。
相続対策を見越して贈与をすることを、相続に関する用語で生前贈与と呼んでいます。
これは通常の贈与と変わらないもので、贈与税の控除額である年間110万円以上の贈与をおこなうと、贈与税の申告・納税義務がありますので、注意が必要です。

3-2-2.死因贈与

死因贈与は、生前贈与と同じく贈与契約を結ぶものですが、財産の移転は贈与者が亡くなった後という条件が付けられるものです。
遺贈と似たような機能があるので遺贈の規定が準用されているのですが、贈与契約である点で遺言をするのか契約を行うのかという法形式の違いが手続きに影響しますので注意が必要です。

4.遺贈を行う場合の注意点

では遺贈を行う場合の注意点を確認しましょう。

4-1.遺言が無効にならないようにする

遺贈は前提となる遺言が有効である場合にはじめて行えるものです。
遺言は民法に規定のある方法によって行うことが必須で、方式を誤ると無効となってしまい遺贈ができなくなります。
公正証書遺言で作成する際には、法律の専門家である公的な公証人という人が作成する書類なので誤りが発生する可能性は極めて低いのですが、自筆証書遺言で作成する場合には専門家の目を通さずに作成されることも多いので、無効となることがあります。
自筆証書遺言で作成する場合でも、専門家に相談しながら作成するのが望ましいといえます。

4-2.本当は相続人が居ると遺留分侵害額請求の対象になるので注意

相続人が居ない場合に国庫に帰属するのは、法律上の相続人がいない場合であることは最初に述べたとおりです。
離婚した妻との間に子がいて、連絡も何もとっていないから相続人ではない、というわけにはなりません。
この場合には相続人である以上、遺留分侵害額請求の対象になりますので注意しましょう。

5.まとめ

このページでは相続人が居ない場合の相続の処理と、これを防ぐための遺贈についてお伝えしました。
相続人が居ない、という場合がどのような場合を指すのかと、その場合には相続財産は国に帰属する旨を理解いただき、これを防ぐ手段として遺贈というものが利用できることを確認してください。

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